<第五回>
宇宙航空研究開発機構 SELENEプロジェクトチーム
主任開発員 中澤 暁

 みなさま、あけましておめでとうございます。
「かぐや」が打ち上がって4ヶ月たちました。“地球の出”や月面の鮮明なハイビジョン映像はTV番組などで流されていますが、科学データも次々と地球に送られてきています。

 現在、私は衛星運用を行っていますが、打ち上げまでの8年間はミッション機器との調整役を担当してきました。簡単に言えば、研究者とメーカが開発したミッション機器を、衛星に無事搭載し、観測を無事遂行するための“マネージャー役”です。「かぐや」は、ミッション機器(選手)が多いので、“マネージャー”も数人でチームを組んでいました。

 いろいろなマネージャーをやりましたが、なかでもEMC(電磁適合性)といって、衛星から漏れる電波や磁場のノイズを抑える仕事があるのですが、LRS(月レーダサウンダ)LMAG(月磁場観測装置)の観測がうまくいくようにするために、非常に苦労しました。通常の衛星では問題にならないのですが、LRS、LMAGは非常に高性能なため、衛星本体を通常以上に低ノイズにしなければなりませんでした。
試験でノイズを計測しては、ノイズの発生や漏れを小さくする対策を検討し、その対策が旨くいくかを試験で確認する、というサイクルを何度も行いました。対策は簡単にはいかず、何度も暗礁に乗り上げました。
それだけに、LRSが初めて受信した観測データを管制室で見たときには、“ぞくっ”として腕に鳥肌が立ちました。ついに!という感じでした。また、LMAGもLRSも衛星からのノイズが小さく無事観測できると聞いたときは、本当に“ほっ”としました。

 15の観測ミッションは、それぞれいろいろな困難にあたり、それを乗り越えて今に至っています。現在着々とデータを取得し、月面の地図(地形だけでなく元素、岩石、重力等の地図も)が作られています。もしかすると、そのうちに「こんな発見が!」というニュースが流れるかもしれません。期待していて下さい。

2008年1月