【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2012.6月 】





【月のオリエンタル盆地における約20億年前までの火成活動について】


    本内容は、2012年6月8日付けで米科学雑誌「Geophysical Research Letters」に掲載された論文「Young mare volcanism in the Orientale region contemporary with the Procellarum KREEP Terrane (PKT) volcanism peak period ~2 billion years ago (Yuichiro Cho et al.)」に関するものです。


    本研究は「かぐや」搭載の地形カメラの高分解能画像により、月の表側と裏側の境界に位置するオリエンタル盆地において火成活動の起きていた年代を研究した結果を報告したものです。

    月の表面のクレーターの大きさと数を正確に数えることで、その地域に溶岩が流れ出て固まってからどのくらいの年数が経過したかを見積もることができます。この手法を用いて月のオリエンタル盆地において溶岩の年代を見積もったところ、これまでは35-38億年前頃に終息したと考えられていた同地域の火成活動が、もっと最近まで続いていたのではないかという結果が得られました。

    今回の結果では、オリエンタル盆地の北東部周囲に分布する溶岩はおよそ20億年前にできたと推定されました。このことは、ちょうど同じ頃に活発に活動していた「嵐の大洋」を形成した火成活動とオリエンタル盆地のそれとが無関係ではなく、これまで考えられていたよりも広範囲でその時期の火成活動が盛んであった可能性を示唆しています。

    また、オリエンタル盆地における火成活動が20億年前頃まで続いていたということは、同地域の地下に存在していた当初のマグマに関して、その温度が比較的高かった、または熱源となる元素の含有量が比較的高かった、と推測できました。




左図:地形カメラのモザイク画像によるオリエンタル盆地の概要。
右図:左図の白線で囲まれた溶岩噴出地域の年代を表したもの。


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