【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2013.10月 】





【月表面における局所的な磁気異常について】


    本内容は、2013年10月に米国科学雑誌Icarusに掲載された論文「Regional mapping of the lunar magnetic anomalies at the surface: Method and its application to strong and weak magnetic anomaly regions (Hideo Tsunakawa et al.)」に関するものです。

    月の磁気異常の原因については、月の科学における最も重要な問題の一つとして長らく議論されているものです。1998年から1999年にかけて米国の月探査機ルナ・プロスペクターが月磁場に関する観測を行いましたが、2007年に打ち上げられた「かぐや」によってさらに多くの月磁場データが得られました。

      本研究では、この「かぐや」の月磁場データを用い、高度0kmの月面上における広域的磁気異常を詳細に推定する新手法を開発しました。このSVM(Surface Vector Mapping)法と呼ばれる手法を、強い磁気異常を示す南極エイトケン盆地北西部と弱い磁気異常を示す月表側南東部分についてそれぞれ適用した結果、ルナ・プロスペクターの月面磁気異常図と今回の「かぐや」による月面磁気異常図とが、どちらの地域においても非常に良い一致を示しました。(図)

    また、今回解析した地域においては、磁気異常のパターンが線状に見られ、磁気異常の原因となる物質が線状に分布している可能性が考えられます。

      SVMによって作成された月面磁気異常地図は、他の種類の月面情報地図(地形図、地質図など)との比較においても有用と考えられ、「かぐや」の他の機器から得られたデータや、他の探査機のデータ等と統合的に解析を行うことで、月の科学の諸問題の解決に大きな貢献がなされるものと期待されます。




図: 今回磁気異常を解析した地域(月裏側SPA盆地北西部の例)
左:かぐやデータによる月面磁気異常マップ、右:ルナ・プロスペクターのデータによる月面磁気異常マップ
それぞれ上から、高度方向、東西方向、南北方向の磁気異常マップと、全磁力(磁場強度)の磁気異常マップを示す


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