【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2014.1月 】





【局在化球面調和関数を用いた衝突盆地の特徴に関する定量的な計測法について】


    本内容は、2014年1月付けで米科学雑誌Icarusに掲載された論文「 Quantitative measurement method for impact basin characteristics based on localized spherical harmonics (Yoshiaki Ishihara et al.)」に関するものです。

    月面には微小天体の衝突でできたクレータが多数存在していますが、それらのうち直径が300kmを超えるものが衝突盆地と呼ばれており、多重リング構造など小クレータと異なる形態を示す物があります。衝突盆地の特徴を調べることは、その形成過程や月の内部の進化、ひいては月以外の惑星等の形成過程に関しての情報が得られることにつながります。一方で、クレータの直径や深さとその形成過程の関係は比較的良く研究されていますが、衝突盆地については多数の研究がこれまで行われているものの、多重リング構造が形成される原因等はまだよくわかっていません。
    これまでの衝突盆地の特徴に関する研究は、主に画像や地形データを研究者の目で見てリング構造の位置を判断するという方法によっていました。そこで、本研究では、地形データから盆地の位置やその環状構造のリング部分の直径・高さ等を計測する定量的な手法を開発しました。また、その手法を「かぐや」のレーザ高度計によって得られた月の地形データに適用し、月の衝突盆地の特徴量の計測をおこないました。


    図は本研究で計測した25カ所の衝突盆地の環状構造のうち、「東の海」を示したものです。25カ所の衝突盆地の主構造のリングの高さと直径を計測したところ、一定の相関があることがわかりました(相関の式は、log10 ( height [km]) = 0.41 x [log10 (diameter [km])]0.57)。また、多重環状構造を形成している衝突盆地の場合には、隣り合うリング同士にも一定の関係があることがわかりました。
    これらの関係からは、盆地を形成した衝突の際に生成された溶融物の量が、盆地の多重リング構造の形成をコントロールしていることが推察されます。
    また、今回開発した新しい手法は、標高地形情報だけに適応されるものではなく、今後重力情報にも同様に適用可能であることから、衝突盆地の内部構造を反映した新たな情報が得られることが期待されます。



    

図 今回の研究で調べた衝突盆地の環状構造の例(東の海)
左:標高データに示された赤線が環状構造右:かぐやの地形カメラが捉えた「東の海」


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