【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2014.4月】





【月レーダサウンダ観測データにもとづく海の火成活動の変遷】


    本内容は2014年4月24日付で米科学雑誌Journal of Geophysical Research Planets (web)に掲載された論文「Mare volcanism: Reinterpretation based on Kaguya Lunar Radar Sounder data (Shoko Oshigami et al.) 」に関するものです。


    月面の暗い部分は溶岩に覆われた「海」と呼ばれる地域です。この海ができる過程を知ることは、月内部がどのように進化したかを知るための重要な手がかりとなります。この研究では、月レーダサウンダ(LRS)による観測データを用いて、月の海の溶岩噴出量の変遷を明らかにしました。


    LRSによって検出される地下反射面の分布からは月の海の玄武岩層の厚さを見積もることができます(図a)。この地下反射面分布と、既存の地質図(図b)とを比較することによって、玄武岩層の体積が推定できます。更に、地質図に示されている各玄武岩層の年齢が推定されている場合には、平均的な溶岩噴出率を見積もることができます。このような解析を月表側のいくつかの海で行った結果、約27億年から38億年の年代をもつ玄武岩層の厚さは数百メートル以下、体積は最大で104 km3、溶岩噴出率は最大で10-3 km3/年であることが分かりました。


    月の海の玄武岩層厚を見積もった研究は過去にもありましたが、この研究とは全く異なるデータ・手法を使っており、解析した玄武岩層の数も非常に少なく、また非常に誤差の大きな結果となっていました。今回の研究によって、月の火成活動の歴史を直接示す貴重な結果を提供できたと考えます。












図:危機の海の月レーダサウンダ(LRS)観測データの例(図a)地質図(図b)
図bに示されている点線はLRSの測線を示し、測線の色は図a中の地下反射面を示す曲線の色と対応している。



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