超高層大気プラズマイメージャ(UPI)は月を巡る軌道上から地球を見る2台の望遠鏡(TEXおよびTVIS)とそれらを搭載するジンバルで構成されます。TEXは、極端紫外光を使って地球のプラズマ圏を撮像観測します。TVISは可視光でオーロラや大気光のグローバルな分布を観測します。
TEXは、酸素イオン(83.4nm)とヘリウムイオン(30.4nm)による共鳴散乱光を検出します。また、極端紫外領域の反射効率を高めた多層膜コーティング鏡とレジスティブアノード付マイクロチャンネルプレートによって、128×128画素の画像を取得します。空間分解能は500kmです。
TVISは、動きの速いオーロラや暗い大気光をとらえるため、明るい反射屈折光学系と高感度CCD撮像素子を備えています。
月から見て地球がすっぽりと収まる視野をもち、空間分解能は地球表面での距離に換算して、およそ30kmとなります。
フィルターを切り替えることで、オーロラや大気光の輝線スペクトルの波長を選択できます。
UPI-TVIS | UPI-TEX | |
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口径 aperture |
Φ136mm(f=320mm) | Φ120mm(f=168mm) |
検出器 detector |
背面照射型フレーム トランスファーCCD Back-illuminated frame transfer CCD |
レジスティブアノード付MCP micro-channel plates with a resistive anode |
視野 field of view |
2.38°×2.38°(512×512pixel) | 10°×10°(128×128pixel) |
観測波長 wavelength |
可視・近赤外光 (428nm,558nm,589nm,630nm,>730nm) |
極端紫外光 (30.4nm,83.4nm) |
TEXおよびTVISは、特殊な2軸ジンバルに搭載されています。第1軸は衛星本体の軌道運動による回転運動を、第2軸は月の地球周りの公転運動をキャンセルします。これによって、望遠鏡は常に地球を追い続けることができます。観測は、衛星に日が当たっていなくて、しかも地球が見える条件の時にのみ行います。
TEX観測からは、地球近傍のプラズマ空間分布を10分ごとに知ることができます。特に世界初となる酸素イオン発光による全地球撮像は宇宙空間プラズマ物理学を大きく進展させるでしょう。TVISによる南北両半球オーロラ帯の同時撮像から、南北地磁気共役点オーロラの詳しい直接比較が可能になります。また、大気光観測からは超高層大気中を、大規模電離層擾乱がグローバルに伝搬していく様子を一目瞭然にとらえることができます。
吉川 一朗
Ichiro Yoshikawa
東京大学
大学院理学系研究科
地球惑星科学専攻