<第二回>
宇宙航空研究開発機構 SELENEプロジェクトチーム
サブマネージャ 原 英雄
月周回衛星(SELENE)地上系プロジェクト担当サブマネージャの原英雄です。
- 1.SELENE地上プロジェクトとシステム開発について
- SELENE地上系プロジェクトは、(1)追跡管制センター機能(衛星の位置決定・予測、衛星テレメトリの分析、コマンドの作成・送信等)及び、(2)観測データセンター機能(データの蓄積・処理、公開等)の開発・運用、並びに(3)運用手順の作成、訓練・リハーサルなど準備作業の推進、(4)観測データの解析処理やサイエンス活動の推進などからなります。
センター機能は、相模原キャンパス内に、月ミッション運用・解析センター(SOAC)として実現しました。2005年度にはシステム単位の開発・試験を終了し、2006年度には範囲を広げて、JAXAが所有する地球局ネットワークや協力を依頼するアメリカ航空宇宙局(NASA)/ジェット推進研究所(JPL)の深宇宙ネットワーク(DSN)を含む地球規模のデータネットワークシステムを総合的に結合する試験、更に、衛星実機と結合した総合試験を行い、同年度末にはシステム開発を基本的に終了しました。
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- 2.現在のSELENE地上プロジェクト状況と体制について
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現在は、8月の本番開始に向けて世界規模で構築したシステムの最終調整に励む傍ら、追跡管制隊員として、最終的な運用準備を進めています。
観測データの高次処理は、搭載観測機器を開発した主研究者(PI)が行いますが、その成果はSOACに登録保存され、公開可能となったデータはインターネット経由で世界中に公開されます。地上プロジェクトはPIのデータ処理、公開業務の支援や、データ利用に関する国際協力の推進も進めています。
プロジェクト制での取り組みは、分野毎に2~4名が組となり、業務の計画、実施・管理に従事する少数精鋭体制です。少人数で広い技術範囲を担当するため、苦労がありますが、皆、先端的でユニークな業務に従事できることに高いモチベーションを持ち、強い責任感を持って遂行しています。
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- 3.運用とデータ利用に関する国際協力について
- SELENEはロケットにより遠地点高度約23万kmの月遷移軌道に投入された後、内蔵エンジンを用い、約20日間かけて月(地球からの平均距離約38万km)に到着します。その後、約20日かけて、月面高度100kmの極円軌道に入るまでに、合計約40日間を要する計画になっています。
この40日間、確実に衛星を運用する観点から強力な通信能力を有するNASA/JPLのDSN(スペイン、アメリカ西部、オーストラリアにある直径34mまたは26mの大型アンテナシステム)による支援を依頼しています。DSNによるSELENE軌道の計測等は、SELENEの運用を要求時間内に、必要な精度で実施するために重要な役割を果たします。
なお、SELENEの観測データの一部はNASAと協力して処理を行い、将来計画の研究に役立てる国際協力を行います。
2007年7月