<第四回>
宇宙航空研究開発機構 SELENEプロジェクトチーム
主任開発員 高野 裕

皆さんは、月をゆっくり眺めたことがありますか?
私にとって、いま、月はとても身近な存在です。歩きながら、時に立ち止まり月を見上げることが多くなりました。遠くて小さくて実際には見えないはずなのに、なんとなく、「かぐや」、「おきな」、「おうな」が、楽しそうに月を回っている、そんな感じがします。

私は、いま、「かぐや」の運用を担当しています。相模原にある月ミッション運用解析センターの中で、他のメンバーと交替で、月を回る「かぐや」を見守っています。
「かぐや」を徐々に月に近づけ、月を巡る軌道に乗せて、「おきな」と「おうな」を「かぐや」から分離させ、目標の軌道に入れる。この間、「かぐや」に異常が発生していないか、眼を光らせ見守ってきました。

10月9日の「おきな」、10月12日の「おうな」の分離を担当しました。
分離は、衛星の姿勢変更から始めます。地上から新しい姿勢データを送り、それに合わせて、衛星がゆっくりと姿勢を変えていくのを見守ります。そして、「おきな」または「おうな」の通信機の動作を確認します。
次に、「かぐや」から「おきな」あるいは「おうな」に電力を供給し、信号を伝えているケーブルを切断。これ以降は、後戻りが出来なくなります。そして、分離コマンドが作動...。姿勢センサに注目します。無事に分離時の反動を捉えることができました。
「分離が実行されました」とのアナウンスが流れると同時に、部屋中に沸きあがる拍手。達成感と安堵の気持ちをかみしめつつ、次に衛星を元の飛行姿勢に戻す作業を、たんたんと進めたことを覚えています。

まもなく、「かぐや」「おきな」「おうな」による、月の本格的な観測がスタートします。
これからも、これらの探査機が順調に月を回っていけるよう、運用に力を入れていきます。
そして...、 「かぐや」の活躍を、その先の新たな月・惑星探査や開発の幕開けにつなげていきたいと思います。

注)「おきな」:リレー衛星の愛称   「おうな」:VRAD(ブイラド)衛星の愛称
2007年11月