月の全球形状および極域地形図
メルカトル図法による月地形図(上が「かぐや」、下がUCLN 2005)
LALTの計測点数は2008年3月末の段階で約677万点、高度の精度は約4m(1σ)、位置の精度は約80m(1σ)です。(従来の全球月地形 モデルULCN 2005では27万点、高度決定精度は数百メートル)オリエンタールベイスンの多重リング構造など、2-300km以下のサイズの地形再現が劇的に向上しています。
ハンメル等積投影図法による月地形図。高度基準は重心原点の半径1737.4kmの球面。
黒丸は月面最高点、白丸は月面最低点の位置を示す。 処理・解析:国立天文台
このデータにより、月の最高地点はDirichlet-Jackson盆地の南端に(-158.64°E, 5.44°N, +10.75 km) 、最低地点はAntoniadiクレータの内部にあり(-172.58°E, 70.43°S, -9.06 km)、高度差は従来考えられていたよりも2km以上大きく、19.81kmであることがわかりました(ULCN 2005では17.53kmとされていました)。
世界で初めて高度計のデータを用いて作成された精密かつ全域の極域地形図 処理・解析:国立天文台
Sh: シューメーカー(Shoemaker), Fa: ファウスティーニ(Faustini), S: シャクラトン(Shackleton), dG: デ=ヘルラテ(de Gerlache)
極域は計測点の分布が比較的稠密であるため直径2-3km程度の小クレータもはっきり捉えています。月探査機の画像や地上レーダ観測では日照条件や観測条件に制約があるため、従来の月極域(特に南極域)の地形図には欠測領域が多くありました。
今回のLALTの観測により世界で初めて欠測領域のない月極域地形図の作製に成功しました。例えばシャックルトンクレータやデ=ヘルラテクレータの(地球から見て)裏側にある凹み、またデ=ヘルラテクレータ内部の直径約15kmのクレータなどはLALTの観測で初めて明確になった地形です。(当該の地域の高分解能レーダによる画像はこちら)この地形図は、将来の月探査における着陸や基地の候補地探索に重要な役割を果たすものと期待されます。また極域の日照日陰条件についてはすでにLALTグループから論文発表されました。(Noda et al., GRL, 35, L24203, 2008)
LALTの観測により、下記のように月の基本形状が決定され、特にレーザ高度計測による月極半径の直接計測は世界初のことです。(2009年2月24日訂正:赤道半径及び赤道扁平率)