【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2013.7月 】





【プラズマシート電子を用いた月面磁場短波長成分の推定】


    本内容は、2013年7月9日付けで米科学雑誌「Geophysical Research Letters」に掲載された論文「Small-scale magnetic fields on the lunar surface inferred from plasma sheet electrons (Yuki Harada et al.)」に関するものです。


    本研究では、「かぐや」に搭載された「プラズマ観測装置(PACE)」と「月磁場観測装置(LMAG)」とによって取得された電子・磁場データを解析し、空間スケールの小さな磁場の月面分布を推定しました。

    月の磁場に関してはアポロ時代より、多くの探査機によって調べられてきましたが、その成因はまだはっきりとわかっていません。月磁場の起源の解明を目指す上で大きな問題点となっていたのが、従来の方法では空間スケールの小さな磁場の月面分布を計測することが非常に難しい、ということでした。
    そこで、本研究では月面磁場付近でのエネルギーの高い電子の運動が低エネルギー電子のものとは異なることに着目して、空間スケールの小さな月面磁場の強さを月周回軌道から測定する手法を開発しました。

    新たに開発した手法を月面の南極エイトケン盆地の南西地域に適用してマッピングした結果(下図)、磁力計で計測することのできる空間スケールの大きな磁場と対応して、同程度の強度をもつ数キロメートルスケールの磁場が月面に分布していることが、高エネルギー電子の観測から推定されました。
     この結果は、これまでアポロやルノホートが着陸した月の表側の数地点でのみ確認されていた空間スケールの小さな磁場が月の裏側にも存在することを示しており、さらに空間スケールの小さな磁場と大きな磁場が何らかの関係を持っていることをも示唆しています。

    この手法を利用して更に多くの情報を集めることによって、月面に残留している磁場の起源の謎を解く大きな手掛かりが得られると期待されます。




図  解析された磁場の分布(月面南極エイトケン盆地南西部)


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