【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2012.9月 】
本内容は、2012年9月7日付で米科学雑誌「Earth and Planetary Science Letters 」に掲載された論文「The global distribution of calcium on the Moon: Implications for high-Ca pyroxene in the eastern mare region (Naoyuki Yamashita et al.)」に関するものです。
本研究ではガンマ線分光計(GRS)の観測データにより、月全球の詳細なカルシウム分布状況を求めることができました。
この研究により得られた最も少ないカルシウムの組成量は8%と、アポロ計画により持ち帰られた月のサンプルの最小値7.5%とよく一致した値を示しています。一方、月のサンプルが採取された場所と本研究におけるカルシウムの少ない地域(嵐の大洋)とは異なる場所であり、アポロ計画により採取された月のサンプルが必ずしも、採取地点や月全体を代表していないことが分かります。
このカルシウム分布の結果からは、これまで言われてきた月の二分性(月の海と高地で構成鉱物が全く異なること)を改めて確認した事に加え、海の中でも東部の海(危機の海、神酒の海、豊かの海など)では、西部の海(嵐の大洋など)に比べてカルシウムが多い事が分かりました。このことから、東部の海ではカルシウムに富む輝石が多く存在し、西部の海ではカルシウムが少ない輝石もしくはカンラン石が多く存在していると考えられます。この違いは海を構成する玄武岩の由来自体、もしくは地下における玄武岩の進化の過程の違いが原因と考えられます。
このため本研究の結果は、月の海の特性や進化の研究に大きな貢献をすると期待されます。
なお、本研究で得られたカルシウムの分布データは、かぐやデータアーカイブにて公開されています。