【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2014.3月 】





【月高地における表面粗度の多様性と年代との相関について】


    本内容は、2014年3月付けで米科学雑誌Geophysical Research Lettersに掲載された論文「Variation of the lunar highland surface roughness at baseline 0.15-100km and the relationship to relative age (Yasuhiro Yokota et al.)」に関するものです。


    月の高地においては、度重なる隕石の衝突が表面の粗度に大きく影響を与えています。このため、表面粗度(凹凸の度合い)を定量的に計測することは月の高地の層序学や年代学の研究に大いに役立つこととなります。本研究では、月周回衛星「かぐや」に搭載された、地形カメラとレーザー高度計で得られた地形データを用いて、月の表面粗度を示す指標を算出しました。

    その結果、月全球における表面粗度の分布を、計測に用いる基線長(基準ものさしの長さ)への依存性も含めて明らかにすることができました。図は、3種類の基線長(3km, 9km, 31km)での表面粗度を用いて地域ごとの特徴を色で表した地図です。得られた表面粗度の分布とその地域における地質年代区分を比較した結果、先ネクタリス代(※1)の古い高地においては、新しい高地よりも、基線長30km 付近での表面粗度が大きいとわかりました。図の赤い領域がそれに対応します。

    また、クレータの大きさとその数の密度がどのように表面粗度に影響を与えるかを理解するために、多数の模擬クレータを重ね合わせていく地形シミュレーションを行った結果、基線長30km付近での表面粗度の増加が再現されました。一方、ネクタリス代(※2)よりも新しい高地(図の緑・青の地域)については、シミュレーションによる粗度の特徴再現ができなかったことから、隕石の直接の衝突によるクレータだけではなく、付近の衝突による2次クレータや噴出物が表面粗度に影響を与えているのではないかと考えられます。

    今回調べた表面粗度の情報をクレータの大きさとその数の密度からその地域の年代を推定する手法に加味することで、より精度良く年代推定ができるように手法を発展させられる可能性もあり、月高地についての研究がよりいっそう深められることが期待されます。


    (※1、2)先ネクタリス代、ネクタリス代、とは、月の地質年代の呼び名です(地球における、「古生代」等と同様)。先ネクタリス代は、月が形成された約45億年前から「神酒の海(Mare Nectaris)」ができたおよそ39億2千万年前までの時代をいい、ネクタリス代はそこから38億5千万年前までの時代をいいます。



表面粗度の特徴を色で表した図


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