【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2014.3月】
本内容は、2014年3月20日付けで英国のロンドン地質学会が出版する書籍「GSL Special Publications: Volcanism and Tectonism Across the Inner Solar System」に掲載された論文「Lunar Mare Volcanism: Lateral Heterogeneities in Volcanic Activity and Relationship with Crustal Structure (Tomokatsu Morota et al.)」に関するものです。
本研究では、「かぐや」によって更新された月面分光データと、年代地図を用いて決定された海の領域の分布と、米国月探査機Gravity Recovery and Interior Laboratory (GRAIL: グレイル) による月地殻厚分布との関係を調べることで、月のマグマ活動の不均質性をこれまでより詳細に明らかにしました。
月は表側と裏側ではその表情が全く異なります。表側には、海と呼ばれるマグマ噴出でできた領域が表面の32%を占めますが、裏側には数%程度しかありません。この不均質性の原因はよく分かっておらず、月の最大の謎の一つとされています。この謎を解明することは、月の熱的進化史の理解に欠かせません。
本研究ではより詳細に不均質性の特徴を調べるため,それぞれの地殻厚の領域で、海で覆われている面積割合を調査しました(図2)。
その結果、地殻が薄い地域ほど海の領域面積が増加していることが確認されました。このことは、地殻が薄い地域ほどマグマ噴出が起こりやすいことを表しています。さらに重要なこととして、同じ地殻厚であっても地域によって噴出面積が異なっていることがわかりました。このことから、月のマントルでは、マグマの生成量と関係するマントルの温度が、水平方向に不均質であったことが示されます。最もマグマ活動が活発であったPKT地域では熱源となる放射性元素が濃集していることが分かっており、これらの熱源元素の分布がマグマ活動に影響を与えていた可能性が示唆されます。