【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2014.7月】
本内容は、2014年7月27日付けで英科学雑誌「Nature Geoscience」に掲載された論文「Strong tidal heating in an ultralow-viscosity zone at the core-mantle boundary of the Moon (Yuji Harada et al.) 」に関するものです。
地球上では、月等の引力によって潮の満ち引きが生じています。この「潮汐」は、地球だけではなく、他の天体でも起きる現象であり、液体の海のない月でも地球等による潮汐力によってその形が変化します。「かぐや」等の観測によっても、この月の形の変化を詳細に調べることができました。一方、これまでの研究では、この月の形の変化は精密に測定できても、その変化の仕方を説明することができませんでした。
そこで、本研究ではどのような月の内部構造であれば、観測された月の形の変化を説明できるのかについて、計算によって調べました。
観測結果を良く再現する月内部の粘性率を推定したものが図1で示されています。これまでのいくつかの研究では、月には中心に金属の核と、その外側に岩石でできたマントル、表面を地殻が覆っていると考えられてきましたが、今回の結果として月のマントルの最深部に軟らかい層があると仮定することで、観測結果をうまく説明できることがわかりました。
また、この軟らかい層の中で、潮汐によって起きる発熱、「潮汐加熱」が効率良く起きていることもわかりました。この層の中では熱の収支バランスが保たれていると考えられます。このような現象は木星の衛星イオでも理論的に予測されたり観測で確認されたりしています。
今回の研究成果によって、探査等による測地観測結果を用いて天体内部を知る手法が進んだだけでなく、地球と月を含む系の歴史を紐解く手がかりがまた一つ得られました。