【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2014.11月】
本内容は、2014年11月付けで科学雑誌「地球化学」に掲載された論文「新たな探査データと月試料の再分析に基づく月科学の再興 (中村 良介 他) 」に関するものです。
筆者(中村他)らは、「かぐや」を始めとする近年の多様な探査データ及び月試料の再分析に基づき、月科学に関するいくつかのトピックについて本論文でとりまとめています。取り上げられたトピックは以下の7つとなります。
●地球・月の形成モデルについて
地球と月の起源に関する過去のモデルのレビューにより、現在最も有力な仮説である巨大衝突説を改めて評価し、その改良モデルについて今後更なる精密なサンプル分析等が説を検証していくであろうことを述べています。
●月の地殻形成プロセスについて
「かぐや」をはじめとする最近の月探査から得られた月の高地の地殻組成に関する研究成果を紹介し、「かぐや」の観測データによって発見されたPAN地殻(※)がどのようにして形成されたかについて検証しています。
●月の揮発性物質とその起源について
40年以上前に取得され、いったん分析されたアポロ試料等について改めて最新技術を用いて再分析することにより、月がこれまで考えられていたように完全に乾いた天体ではなかったことを紹介しています。
●惑星移動モデルと地球=月系の衝突史について
また、前章で言及された月内部に存在していた水がどこから供給されたのかについて、形成直後の月に揮発性物質を多量に含む天体が衝突した可能性について議論されています。
●月の火成活動
さらに、この章でも前章・前々章と関連して水や炭素といった揮発性物質と月における火成活動に関しての研究についてレビューしています。
●他の惑星系への展開
最後に、最終章においてこれらの地球・月を取り巻く研究成果を系外惑星へと発展させていく際の見通しについて議論してしめくくっています。
いずれも日本の探査の成果の紹介を絡めながらこれまでの月科学に関する総括的な議論として、濃密にまとめられた総説です。
※ 有色鉱物をほとんど含まず、斜長石の割合が非常に高い(>98%)斜長岩からなる地殻。