【「かぐや」の成果 ~ お知らせ 2015.4月 】
本内容は、2015年4月(2014年12月4日オンライン公開)付けで米科学雑誌「Icarus」に掲載された論文「Crater-ray formation by impact-induced ejecta particles (T.Kadono et al.)」に関するものです。
月のような天体の表面では、隕石等の衝突によってできたクレータの周りに「光条(レイ)」と呼ばれるパターンが放射状に分布していることがあります。光条がなぜ明るく見えるかについては過去にも多くの研究が行われましたが、なぜ「不均一に分布するのか」についてはあまり研究されてきませんでした。
そこで、本研究では、衝突実験の結果と「かぐや」の地形カメラのデータを用いた解析の結果とシミュレーション計算とを組み合わせることによって、光条の不均一な分布がどのようにして生成されるのかについて調べました。
ガラスビーズ等を利用した衝突実験の結果、衝突による噴出物は、ゆるい網の目状に分布する事がわかりました(図1)。この網の目状のパターンは、「かぐや」の地形カメラによって撮影されたGlushkoクレータとKeplerクレータの画像に見られる光条のパターン(図2)と非常に良く似ていることが確認されました。さらに、シミュレーション計算によって、どのような物性の粒子であれば明瞭な網の目状のパターンができやすいか調べたところ、粒子間の反発係数が小さい状態にそのようなパターンができやすいことがわかりました。
今回の研究成果によって、これまでよくわからなかったクレータの光条の形成プロセスが、粒子の物性によって影響されていることが示され、今後の天体表面における地史の解明に大きな手がかりを与えることが期待されます。